【自閉症】感覚の問題を緩和するヒント

子育て
【スポンサーリンク】

自閉症における感覚の問題は、診断項目にもあげられるようにどの人にも生じやすい、一方で感覚の問題は人によって異なり、適切な理解が必要である。

感覚の受け取り方の問題は自傷や他害に繋がり、当事者、支援者にとって喫緊の課題になりうる。

今回は、感覚の問題を過反応、低反応、探求行動の3つに分け、それぞれに対する支援方法を見ていく。

過反応

まず感覚刺激に対する過反応とは、目や耳や肌などの感覚器官でキャッチされた外界の情報を、実際よりも大きく脳が受け取ることで生じる。

脳の受け取り方は生まれもったもので変えることは難しい。

蛍光灯の光が太陽のように眩しく感じる、周りの音が常に大音量で聞こえるなど当事者にとっては耐え難いことである。

そこで重要になることが環境調整である。

環境調整の例

例えば、光が眩しく感じる時、部屋のライトやカーテンの色味を変える。

また、遮光グラス(その人にあった色のグラス)を場面に応じてかけることも有効である。

音に対する環境調整として、イヤーマフノイズキャンセリング機能のあるイヤホンなどが有効に働くことがある。

環境調整は特別支援学級や、セラピールーム、自室のような個人的な場所で取り入れやすい。

一方で社会の中で生活していく上で、その人が苦手な刺激と向き合わなければいけない時がある。

その時に心がけたいことは構造化である。

構造化の例

構造化とは、“どこで、いつからいつまで、どのように、何が与えられるのかを明確に理解してもらうこと”(岩永,2015,P141)をさす。

以下歯磨きの構造化の例をあげる。

  • 毎回決まった音楽を流し、その音楽が終わったら歯磨きを終える。
  • 上記の音楽は、子どもが好きな曲や音を用意することで、子どもの緊張を和らげることができる。
  • 歯磨きを使用することが難しい時、指歯ブラシを使い指で歯を磨く。
  • 決められた時間じっとしていることができたら、「よく頑張れたね!」と頑張れたことを伝え、成功体験を積む。
  • 音楽が流れる間じっとしているなど、達成できた時は、寝る前に好きな本を読んだりマッサージをするなど、その子が嬉しいと感じる結果を用意する。

この方法を実施する上で何よりも重要なことは成功体験を積むということである。

初めは、時間を短く設定したり、刺激の少ない歯ブラシを使うなど、ハードルを低く設定することが重要である。

低反応

感覚刺激に対する低反応は、過反応とは逆で、感覚器官を通してキャッチされた外界の情報を、実際より小さく脳で受け取ることで生じる。

この低反応が起こる理由として、刺激をキャッチするセンサーの感度が弱いことがあげられる。

感度を高めるためには、様々な感覚刺激を得る体験をすることが重要である。

子どもが反応しずらい感覚器官に関連する刺激を、その強度や頻度を変えながら与え、子どもの反応を引き出していく。

例えば、高所を怖がらず危険な行動をしてしまう子どもがいるとする。

この子に公園のブランコや遊園地の回転するコーヒーカップを体験してもらう。

すると、体の揺れや傾きの感覚である前庭感覚に刺激が入る。

結果、高所に対する恐怖心が芽生え危険な行動が減るということがある。

この方法を実践する上で過度の感覚刺激は、子どもにとってストレスになることに注意を払う必要がある

特に低反応の子どもにおいて、不快であることを表現することが難しいことが多い。

事前に十分な情報収集(情報収集については「自閉症と感覚の問題」を参照)をし、どの様な刺激をどの様な強度でいれていくのかを計画しておくことが重要である。

感覚探求行動

感覚探求行動とは、感覚刺激を得るために同じことを繰り返す行動をさす。

例えば、飛び跳ね、指吸い、自分で自分の頭を叩くなどがあげられる。

この感覚探求行動が起こる要因の一つとして、感覚刺激をキャッチすることの難しさがあげられる。

人間は感覚刺激が得られない状況に置かれると精神を病む(杉本,1986)。

自閉症の特性から感覚刺激をキャッチしにくいということは、刺激が少ない状況に常に置かれているということになる。

結果的に、自分がキャッチしやすい刺激を得ようとすることは必然である。

このことからも、感覚探求行動をやめさせるということは現実的ではない

だからと言って、自分を傷つけるような探求行動や、感覚を得にくいことから生じるフラストレーションをそのままにすることは、その人の生活の質(QOL)を低下させる。

そこで、自分を傷つけるような探求行動に対しては、その行動に似ていて、より安全な行動を教えることが重要である。

以下、頭を叩く探求行動を例に支援方法を考える。

自傷につながる探求行動を和らげる支援の例

頭を叩くという行動は、筋肉からの感覚情報である固有受容覚や揺れや傾きの感覚である前庭感覚を得ようとする行動であると推測できる。

そこで、体に振動を加えることができるハンディーマッサージャーを使い、体をマッサージする時間を設ける。

また、ビーズクッションを使った運動療育も効果的かもしれない。

さらに、太鼓を力一杯叩く活動も様々な感覚に働きかけることができる。

これらの活動を取り入れるにあたって重要になることが先にもあげた構造化である。

特に、先の見通しを持つことや切り替えに課題がある時、際限なくその活動をしてしまったり、気持ちが高まり過ぎてしまったりすることがある。

場所や時間、その活動ができる条件を、当事者との関わりの中で設定して行く必要がある。

参考・引用文献:岩永竜一郎(2015)自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法,東京書籍株式会社.

コメント

タイトルとURLをコピーしました