親が子どもに「勉強しなさい!」「いつになったら宿題するの!」と勉強するよう訴えるのは、どこの家庭でもあることだ。
また、学校現場でも教師が気持ちの乗らない子どもに対して作文指導をしたり、隅々まで掃除をするよう促したりすることもよくあることだ。
子どもはもちろん、誰しも興味の持てない課題や活動に取り組む時、動機づけ(モチベーション)は低くなってしまう。
このモチベーションを向上させるための視点として有効なのが有機的統合理論である。
有機的統合理論?
有機的統合理論とは、心理学の動機づけ研究において提唱された理論である。
この理論では金銭的な報酬という外的な要因によるモチベーション(外発的動機づけ)から、その活動に取り組むこと自体への満足感という内的な要因によるモチベーション(内発的動機づけ)に変化していく過程が示されている。
怒られないためにやる→好きだからやるに至る過程
モチベーションが低い活動であっても、やっているうちに楽しくなって夢中になるということは誰しもあるのではないだろうか。
このモチベーションが向上する過程が以下の5つである。
- 外的調整(報酬を得る/罰から逃れる)
- 取り入れ的調整(他者と比較する)
- 同一視的調節(活動の価値を自分のものとして受け入れる)
- 統合的調整(活動の価値と自己の欲求が調和する)
- 内的調整(興味や楽しさ満足感がある)
これらステップは隣同士で関係が強いとされる。
つまり、ステップを踏むことで、よりモチベーションの高い状態へともっていくことが可能であると言える。
モチベーションを高める3つの観点
モチベーションを高めるには以下3つの観点が重要となる。
- 自律性…自身の行動を自分で決めている感覚
- 有能感…自分の能力や才能を示すことができているという感覚
- 関係性…重要な他者と心理的につながっているという感覚
これら3つの観点の中でも、自律性を支援することでモチベーションを高めようとした研究が多く見られる。
例えば、Deci、Eghari、Patrick(1994)では自律性を促すために必要なこととして、「対象者に活動に対する合理的な動機を提供すること」「対象者の気持ちを汲み取ること」「対象者に活動の選択肢を与えること」などがあげられている。
また、高校の教師に自律性支援について説明しただけで、その教師が指導した子どもたちの学習活動に改善が見られたことを報告しているものもある(Reeve et al.2004)。
結び
宿題のような元々モチベーションの低いことをやる、またはやらせようとする時、これら3つ観点が満たされているかを考えることは重要である。
例えば、「宿題をやる時間を子どもが決める。」「宿題をする時は、信頼できる大人がそばにいて質問できる。」「宿題で難しい問題を解いたら、それを認めてくれる人がいる。」など、環境や場面を設定することで自分から宿題に取り組む子になっていく。
これは自身にも当てはめることができる。
自分が今取り組んでいることで、どうしてもモチベーションが上がらないという時、これら3つの内、欠けていることを意図的に補うことで苦手なことでも継続したり、達成できたりする可能性を上げることができるといえる。
参考・引用文献:上淵寿・大芦治(2019)新・動機づけ研究の最前線,北大路書房.
コメント