発達障害に処方される薬は大きく2種類
発達障害に対して処方される薬は、注意欠如多動症(以下ADHD)に対するものと、自閉スペクトラム症(以下ASD)に対するものの大きく2種類がある。
さらに、日本で適応承認が得られている薬として以下のものがあげられる。
↓ADHD治療薬↓
- メチルフェニデート(コンサータ®︎)
- アトモキセチン(ストラテラ®︎)
- グアンファシン(インチュニブ®︎)
↓ASD治療薬↓
- リスペリドン(リスパダール®︎)
- アリピプラゾール(エビリファイ®︎)
薬の効果について述べる前にADHDとASDのの特性についてみていく。
ADHDの特性
ADHDは注意の欠如、多動、衝動性という3つ観点下から診断がなされる。
多動・衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型などその人によってタイプが異なる。
不注意には、注意の切り替えが難しかったり、先延ばし傾向があったりすることが当てはまる。
多動には、場所にそぐわない活発な行動、じっとしていることが難しいことが当てはまる。
衝動性には、見通しを立てず直感的に行動することなどが当てはまる。
ASDの特性
ASDは「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応」と「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式(こだわり)」の2つの観点から診断がなされる。
ASDには上記の中核症状に加えて発生する症状として、易刺激性があげられる。
易刺激性とは、気分が変わりやすかったり、感情の制御が難しかったりすることによって生じる行動面でのできにくさをさす。
不適応行動が起こる理由
ADHDの多動、不注意、衝動性やASDの易刺激性による不適応な行動は、脳の中でつくられる感情や行動の元ととなる神経伝達物質が原因で生じる。
この神経伝達物質が少ないと多動や衝動性につながり、多いと感情のコントロールが難しくなってしまう。
そこで、この神経伝達物質の量を調整するために用いられるのが、発達障害に処方される薬である。
薬の効果
ADHD治療薬の効果
ADHD治療薬は神経伝達物質を増やす働きをする。
その結果、ADHDの不注意、多動性、衝動性を改善させる。
薬を飲んでいる子どもからは「今まで頭の中がぐちゃぐちゃしてたのが整理される感じ。」ということを聞いたことがある。
ASD治療薬の効果
ASD治療薬はADHD治療薬とは逆で物質を減らす働きをする。
その結果、興奮状態を沈めるなど易刺激性の改善につながる。
感情のコントロール困難によって生じる、自傷行為や他者への攻撃に対して有効にはたらく。
ASDの特性である社会性やこだわりに働きかけるわけではないので注意が必要である。
副作用
ADHD治療薬の副作用
3つのADHD治療薬全てに共通している副作用として睡眠に関する問題が生じる可能性がある。
メチルフェニデートは目を覚ましてしまい、逆にアトモキセチンとグアンファシンは眠くなることがある。
いずれにしても服薬のタイミングに注意が必要である。
また、メチルフェニデートとアトモキセチンには食欲の低下という副作用がある。
以前、服薬している子どもで毎回の給食が、ご飯お茶碗半分で十分という子と関わったことがある。
健康な発育において、食事は重要な要素を担う。
あまりに食欲が減退する際には、医者に相談する必要があるだろう。
最後に、メチルフェニデートの副作用として依存性があげられる。
依存が生じる理由として、報酬に関係する血液内の物質の濃度が急激に上昇することがあげられる。
そのため、メチルフェニデートは体内で吸収がなされやすい粉薬ではなく、開くことのできないカプセル薬として処方され、吸収が緩やかになる工夫がされている。
ASD治療薬の副作用
アリピプラゾールとリスペリドンの共通している副作用として、傾眠や鎮静があげられる。
いずれも、頭がボーッとする、動きがゆっくりになる副作用である。
薬の量が多い場合ふらつき、倦怠感、疲労感につながることがあり適量の服薬が重要となる。
ここであげたASD治療薬は抗精神病薬に含まれる。
抗精神病薬については「ADHD・ASDに処方される薬は安全?」でさらに詳しく解説してるのでそちらを参照していただきたい。
参考・引用文献:稲田健(2020)本当にわかる精神科の薬はじめの一歩改訂版,羊土社. 黒田美保(2019)公認心理師のための発達障害入門,金子書房.
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