2種類の薬
ADHDやASDの子どもたちに処方されている薬として、よく目にするものとして「クロルプロマジン」、「スルピリド」、「リスペリドン」、「アリピプラゾール」があげられる。
これらの薬は体内でどのような働きをするのか、また安全性は保たれているのかについてみていく。
上にあげた薬は精神科で処方される薬の中で、抗精神病薬に分類される。
さらに抗精神病薬は定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分けられる。
「クロルプロマジン」「スルピリド」→定型抗精神病薬
「リスペリドン」「アリピプラゾール」→非定型抗精神病薬
定型抗精神病薬
定型抗精神病薬は脳内で分泌されるドーパミンに直接作用し、その量を減らす。
ドーパミンとは、脳を覚醒させたり快感を生み出す神経伝達物質で、精神活動を活発にするといわれる(岩田,2018)。
ドーパミンが減ることによって、活発になりすぎた精神活動を抑えることができる。
つまり、注意散漫や過集中、幻覚・妄想といった脳が活動しすぎることによって生じる症状を抑える。
一方で、このドーパミンの量が減りすぎることによって困った副作用が出てしまう。
副作用
副作用として「過鎮静」、「錐体外路症状」、「悪性症候群」があげられる。
「過鎮静」
「過鎮静」とは鎮静が行きすぎた状態で、眠気やふらつき、倦怠感、疲労感などが生じている状態である。
「錐体外路症状」
「錐体外路症状」とは普段無意識に行なっている運動の円滑さを制御できなくなった状態である。
具体例を以下にあげる。
- 小刻み歩き
- 手足のふるえ
- アンバランスな姿勢
- じっと座っていられない
- 何も食べていないのに、口をもぐもぐと動かす
「悪性症候群」
「悪性症候群」とは、40℃以上の高熱、筋肉が固まりスムーズに動かしづらくなる(筋強剛)が現れる副作用で最も重篤な症状である。
この副作用が出る前の症状として、発汗、頻脈、動きがなくなり固まったり黙り込んだりする、ふるえ、言語障害、よだれがたくさん出るなどがあり、これらの症状を早期発見することで、重篤な状態に至ることを防ぐことができる。
これらの副作用はいずれもドーパミンの量が減り過ぎることで起こる症状であり、その減りすぎを起こさないよう開発されたのが非定型抗精神病薬である。
非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬はドーパミンだけでなく、セロトニンにも働きかける薬である。
セロトニンとは、ドーパミンやノルアドレナリンの過剰分泌によって生じる、脳の過剰な覚醒や活動を抑える物質である(岩田,2018)。
非定型抗精神病薬はこの、セロトニンに働きかけることによって、間接的にドーパミンの量を調節する。
結果的にドーパミンの量が減り過ぎるのを避けることができる。
定型抗精神病薬は危険?
抗精神病薬が処方される際、世界的にみてまず選択されるのは非定型抗精神病薬のようだ。
これは日本でも一般的で、まず非定型抗精神病薬を処方し、それで効果がないときは定型抗精神病薬へと移行していくとされる。
ただ、幻覚や妄想、それに伴う興奮や行動の程度は個人差があり、それによっても非定型か定型かの選択は変わってくるようだ。
子どもが飲むことになる薬に関しては、かかりつけの医師にその効果や注意点などを確認する必要があるだろう。
また、非定型抗精神病薬であっても容量を守らない過量な服薬は、上記のような副作用を引き起こす。
子どもが服薬する量が、誤って多くならないよう、家庭の薬の管理方法にも注意を払う必要があるといえる。
参考・引用文献:姫井昭男(2020)精神科の薬がわかる本,医学書院.岩田誠(2018)史上最強カラー図解 プロが教える脳の全てがわかる本,株式会社ナツメ社.
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