学校現場でSSTは実践しずらい…
SSTとは、社会生活を送っていく上で必要とされる技能を身につけるためのトレーニングのことをさす。
このソーシャルスキルの中には、自己認知スキルやコミュニケーションスキル、社会的行動などが含まれる。
SSTを実践することで、自分の気持ちや考えを適切に表現できる様になり、困った行動が減ることが期待される。
一方で、このSSTを学校現場で実践するには困難さがある。
それは、学校では教育課程に基づき授業が実施され、SST単体に時間をかける余裕がないことから生じる。
その中で、特別に時間をかけなくても学級活動の中で起こった出来事を題材にSSTを行うのが「機会利用型SST」である(多賀谷・佐々木,2005)。
いつでも、どこでもSSTは実践可能
「機会利用型SST」では、例えば休み時間に起こった喧嘩を題材に、どうしたら仲直りができるのか、次また同じ問題が起こらないためにどうしたらいいかなどを考える。
また、授業に積極的に参加する子どもの姿を題材に、なぜその行動が望ましいのかを考えたり、その様な行動が増えるような教室環境を作ったりすることも想定される。
一方で、この「機会利用型SST」にも課題が存在する。
それは、偶発的に起こったことを題材に取り上げるということである。
つまり、問題が起こってからの対応になるということであり、子どもの望ましい行動ありきの実践になってしまうということだ。
教科学習の中で意図的に行うSST
その中、この「機会利用型SST」を各教科の中で取り入れ実践をこころみたのが多賀谷・佐々木(2005)である。
その中から、話し合い活動を利用してSSTを行なった実践を紹介する。
話し合い活動の中で実践するSST
実践をするにあたって、まず以下のような話し合いの流れが子どもたちに示された。
- 選択肢から自分の意見に近いものを選ぶ。
- 自分の支持する意見に挙手をする。
- 教室の真ん中に机を向けて互いの意見を話し合う。
- 再度自分の支持する意見に挙手をする。
この話し合いの流れで、毎回話し合いが行われた。
また、話し合いの約束事として以下のことも示された。
- 意見を言いたい児童は立つ。
- 2人以上が同時に立った時は、お互い譲り合って決める。
- 自分の意見が変わった時は、別の立場で発表してよい。
話し合いを通して、子どもたちは、自分の意見をもつこと、その意見を相手に伝えたり相手の意見を聞いたりすること、よりよい意見を自分たちで作っていくことなどを体験的に学んでいくことが期待される。
さらに、この実践を取り入れることの長所として、教科的観点に社会的観点が加わることで、子どもたちが認められる要素が増えることが挙げられている。
事前にルールや望ましい姿が明示されることで、子どもたちは行動を起こしやすくなり、その結果、他者から認めらたという経験によってソーシャルスキルが身に付いていくという構造である。
参考・引用文献:佐々木和義(監修)(2016),認知行動療法を生かした発達障害児・者への支援〜就学前から就学時,就労まで〜,ジアース教育新社.
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