心理のプロも使っている相手の変化を引き出す面接技法

心理学
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プロが使う面接技法

アルコール依存症患者から、「もう飲酒はやめる」という決意を引き出す。

矯正施設において、社会規範から逸脱してしまった子どもたちの抵抗を下げ、前向きな気持ちをひき出す。

このような緊急度が高く、技術が必要とされるカウンセリング場面で用いられる面接技法が「動機づけ面接」である。

動機づけ面接とは

動機づけ面接とは、“ニューメキシコ大学ミラー教授とカーディフ大学ロルニック教授が、アルコール依存の問題があるクライアントに対する治療成績が良かったカウンセリングの分析、解析を行い、体系化したのを起点とし、その後、さまざまな分野において広く発展していった面談スタイルである(青木・中村,2017,P10)”。

この動機づけ面接では、面接相手に変わることを強制しない

むしろ、面接相手がすでにもっている「変わることに対する動機」を引き出し拡大することで、自然な変化を呼び覚ますよう対話する

中核的な4つのスキル

動機づけ面接では、面接開始から終わりまで一貫して用いられる中核的な4つのスキルがある。

それらのスキルは、それぞれの頭文字をとってOARSと言われる。

それぞれが何を指すかは以下の通りである。

  • Open questionー開かれた質問
  • Affirmingー肯定
  • Reflectingー振り返り
  • Summarizingー要約

各スキルをさらに詳しく見ていく。

Open questionー開かれた質問

開かれた質問とは、「いつ、どこで、誰が、何を、どのように、なぜ」などのいわゆる5W1Hを使った質問で、相手が答えるときに「はい/いいえ」で答えることができない質問を指す。

話をする中で、まず相手からより多くの情報を引き出す必要がある。

その時に、「はい/いいえ」で会話が終わってしまっては何も始まらない。

Rerlectingー振り返りの傾聴

上記の開かれた質問と合わせて使われるのがこの振り返りである。

振り返りの目的は、相手が言いたいことを聴き手が推測し、それがあっているかを確認することにある。

一般的に人は話をする時、何かしら伝えたい「意図」をもっている。

この意図はほとんどの場合不完全な言葉として表現される。

だから、意図をクリアにしていく作業が振り返りである。

具体的には相手の言葉を繰り返す(オウム返し)ことに加え、相手が頭の中で考えているまたは感じているであろうことを付け加えて返す。

そうすることで、相手が自己を探求するきっかけをつくる

その際に重要なことは質問形式で尋ねるのではなく、肯定文または否定分で伝えるということだ。

「初めての場所で人と話すのは不安かな?」

「初めての場所で人と話すのは不安なんだ」

言語学的に質問は解答を要求する。

質問された面接相手は自然と受け身になったり、「なぜそんなこと聴かれないといけないんだ!」と反発したりする。

そこで、肯定または否定形で返すことで、自分自身を一歩引いて観察するよう導く。

Affirmー認めて肯定する

面接の中で、相手のことを直接的に認め肯定することは、関係性を深める上でも重要な技法である。

関係性ができると、面接相手は聴き手に対し心を開き自己を探求するようになる。

このスキルで重要なことは何を認め肯定するかである。

むやみやたらに相手のことを認めると、聴き手は相手の思いや考えに振り回されてしまう。

そこで、相手からどのような姿を引き出したいのかを明確にしておく必要がある。

子育て面談において、親の努力を認め、苦労を労うことで親子間の良い関わりを引き出したいと決めておくことで、それに関連する言葉が出てきた時に反応することができる。

さらに、面接相手も認められた話はもっとしたいという気持ちになり、こちらが引き出したい姿を拡大していくことができる。

Summarizeー要約して締めくくる

この要約はそれまでに話してきたことを繋ぎ合わせ、引き出したい姿をより明確にする役割を果たす。

要約する時は、こちらが引き出したい姿だけでなく、面接相手が変われないとする理由も合わせて伝えることが重要である。

もしこちらが望んでいる姿を強調して要約してしまうと、面接相手はそれに対して反対の考えがないかを探すことになる。

相反する考えや気持ちを要約するときに注意すべきこととして、「けれど」のような逆説で繋いではいけない

なぜなら、逆説はそれまでの話を否定したり、曖昧にしたりしてしまうからである。

そこで「一方で」や「同時に」という言葉でつなぐことで面接相手が一歩引いて自分の思考と向き合うよう導く

要約には面接相手との関係性を作る上でも効果的である。

相手の言葉を適切にまとめて伝え返すことで、相手は「自分の話をしっかりと聴いてくれた」(実際に聴かないとできない)となるからだ。

まとめ

私の体感として、「開かれた質問」や「振り返りの傾聴」のスキルは実践しやすく、その効果も実感しやすい。

今話題のひろゆき氏の動画を見ていると、これら二つのスキルが頻繁に使われている印象を受ける。

また、「肯定」のスキルに関して、私たちは無意識の内にこのスキルを使い、自分が好ましいと思うことを強化している。

つまり、相手の今の姿は自分が引き出した結果とも捉えることができ、人間関係は相互作用で成り立っているということを忘れてはいけない。

参考・引用文献:William R. Miller・Stephen Rollnick(著)松島義博・後藤恵(訳)(2016)動機づけ面接法 基礎・実践編,星和書店. 青木治・中村英司(2017)矯正職員のための動機づけ面接,公益財団法人矯正協会.

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