誰もが通る手計算
子どもの頃、誰もが手指を使って数えたり、計算したのではないだろうか。
一方で、小学校に入学し学年が上がるにつれて、手指を使って計算することは恥ずかしいこととされ、頭の中で計算することが半ば強制される。
手指の認識
手計算をするときに必要となってくるのが、手がどのような形になっているか(例:グー、チョキ、パー)を識別する手指の認識である。
手指と数量の関係を検討した研究から、この手指の認識は数量能力を予測するということが明らかになっている。
さらに、脳研究においても、手指の認識と数量処理は、同じ神経基盤を共有していることが明らかになっている(Rusconi,Walsh,&Butterworth,2005)。
つまり、手指の認識は数の認識と関係しており、幼少期に手指を使った活動(例:粘土、折り紙、ブロック)をすることで、手先が器用になる(手指を操作する力の向上)だけでなく、数の処理能力を高めることが予想される。
発達とともに変化する手計算
手計算は子どもの発達とともに変化し、大きく3段階に分けることができる(Fuson,1988)。
- 1本ずつ指を数えて計算するCount-all方略。
- 1度に数を表して計算するCount-on方略。
- 手指を利用せずに計算する。
上記の順で手指を使った計算を子どもに教えることで、計算能力を育んでいくことができる。
また、幼少期は5を基準として計算させる方が、10を基準とするよりも足し算の成績が良かったとする研究がある(栗山,2002)。
簡単な計算にもステップがあり、子どもの発達段階にあった方法を伝えることが、子どもの成功経験を引き出しやすくなる。
手指の器用さと計算能力
小学1年生を対象に、毎朝10分間、手指を器用に使うための訓練を3週間したところ、計算能力が向上したという結果が得られた(Asakawa,Murakami,&Sugimura,2019)。
つまり、先にも述べたが、手指を使う粘土やブロック、折り紙などを用いた遊びを幼少期にたくさんしていることは、計算能力の向上につながるといえる。
書いたり読んだりすることだけが学習ではないということ、幼少期の体を使った遊びは学童期の学習に影響を与える可能性があることを念頭に置きながら子どもとかかわることが重要である。
参考文献:北洋輔・平田正吾(2019)発達障害の心理学ー特別支援教育を支えるエビデンス,福村出版株式会社.
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