子どものネガティブな思考/行動に働きかける【CBT:認知行動療法】

子育て
【スポンサーリンク】

子どものネガティブな思考や行動に振り回されていませんか?

一度の失敗で全てがダメになってしまい、切り替えられない…

「絶対失敗する!」と、何かを始めるのに時間がかかる…

悪いことにばかりに目がいき、良いことに目が向かない…

上記のような子どもによって、周囲の人が振り回されているということはよく目にする。

そのような子どもは、自分が小学校の教師をしていた時にも一定数おり、集団での活動が難しくなることもしばしばであった。

しかし、困っているのは周囲の人以上にその子どもであるということを忘れてはならない

子どもがこの状態に陥る要因として、「認知の歪み」がある。

「認知の歪み」とは

「認知の歪み」とは、認知行動療法の中で提唱されている。

まず認知行動療法とは、

  • 否定的な認知から、より現実的でバランスのよい考え方に変えていく「認知療法」
  • 新たな行動パターンをとることで問題解決能力を高めていく「行動療法」

これら二つの考え方を統合したものである(松浦,2019,P30をもとに記述)。

この認知行動療法における「認知」とは、「物事の受け取り方」をさす。

つまり「認知の歪み」とは、認知(物事の受け取り方)が極端で非現実的で、バランスの悪い状態をさす。

この認知の歪みによって、感情や行動の問題が生じやすくなる。

発達障害と認知の歪み

例えば自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準に、「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式(こだわり)」が含まれるように、その特性と認知の歪みの関係性は大きいといえる。

また、ADHDには注意のコントロールが難しいという特性がある。

注意を向ける方向が偏っている時、それが認知の歪みにつながることは想像に難くない。

このように発達障害からくる特性と認知の歪みには、少なからず関係性があると考えられている。

認知の歪みから生じる悪循環

認知の歪みは自己肯定感の低下につながりやすい。

それは、認知の歪みによって生じる感情、そしてその感情によってもたらされる不適応な行動が失敗経験をもたらすからである。

この「認知の歪み→感情→行動→失敗」という一連の流れは生活の中で定着していることが多く、悪循環となっている。

悪循環を好循環へ変える4ステップ

認知行動療法では、この悪循環を以下のステップで好循環へと変えていく。

  1. 「認知の歪み」を理解する
  2. 感情に働きかける
  3. 行動に働きかける
  4. より望ましい結果へと導く

それぞれのステップを詳しく見ていく。

1.「認知の歪み」を理解する

そもそも認知は外から観察することができず理解することが難しい。

そこで、認知行動療法では、この認知の歪みにいくつかのパターンを示している。

それらのうちの一部が以下の通りである。

  • 白黒思考(物事を極端に捉える)
  • 過度の一般化(一つの失敗にとらわれる)
  • 結論への飛躍(根拠のない否定的な予測をする)
  • 心のフィルター(自分にとってよくない側面にとらわれる)
  • マイナス化思考(良いことも悪いことへとすり替わる)
  • 拡大解釈と過小評価(失敗を過大に、成功は過小に評価する)
  • すべき思考(「こうあるべき」という考えにとらわれる)
  • レッテル貼り(失敗から否定的なイメージを形成する)
  • 個人化(悪いことは全て自分の責任と捉える)

これらのパターンはあくまでパターンであり、認知を見えやすくするためのものである。

子どもの数だけ認知は存在するということを念頭に、子ども自身がしっくりくる理解方法を考えることが重要である。

2.感情に働きかける

感情は一瞬の内に発生するものである。

だから、気付いた時には、すでに不適応な行動をしてしまっており後戻りできなくなっている。

そこで、行動を起こす前の感情に気付くことが重要となる。

感情に気付くために以下のような方法がある。

  • 支援者が子どもの感情を言葉にして伝える(例:怒って机を叩く子→「〇〇君はわからない問題があると、悔しくってイライラして机を叩いてしまうんだね」)
  • 感情を子どもにとって身近なものに置き換える(例:怒りのコントロールが難しい子→「気持ち信号が赤色だよ」)

感情を言葉や図などを用いて表すことで、認知発達が未成熟な子どもであっても今の自分の状態に気付きやすくなる。

3.行動に働きかける

自分の認知と感情に気づけるようになったら、それによって生じていた不適応な行動に働きかける。

自分の認知特性を知ることで、ネガティブな感情を小さく抑える行動がとれるかもしれない。

また、ネガティブな感情が発生しても、その時の対処方法がわかっていれば本人も周囲の人も安心できる。

ここで何よりも重要なことは、具体的な行動を前もって示すということだ。

前もって行動を示すにあたって、押さえておく必要があることは以下の通りである。

  • 目の前の子どもが9割できる行動
  • 選択肢を提示して子どもが選ぶ
  • 環境を整える

ネガティブな感情に対する対処法は様々あると思うが、子どもができる、またはやろうとしなければ意味がない。

また、その行動をサポートする人や場所を用意することも重要である。

4.より望ましい結果へと導く

最後に悪循環を好循環に変えるためには、子どもが自分の認知を理解し、感情と行動に働きかけた結果、良い結果を得られたという成功体験を周囲の大人が意図的に作る必要がある。

これまでと異なった行動をするということは、子どもにとってそれ相応のエネルギーを必要とする。

頑張ってやってみたものの、結果が今までと変わらなければその行動はすぐに消えてしまう。

予め考えておいた行動ができるようなきっかけを与え、その行動ができたら、大いに認められるということが悪循環を好循環に変えていくために必要不可欠である。

参考・引用文献:松浦直己(2019)教室でできる気になる子への認知行動療法「認知の歪み」から起こる行動を変える13の技法,中央法規出版.

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました