運動能力と学業成績
国内外の研究から、体力・運動能力が高い児童・生徒は学業成績も高いことがわかっている。
このことは、その子どもの家庭の経済状況や、放課後、家庭で学習に取り組む時間の長さとは関係がないことも示されている(Ishihara et al.,2017a)。
運動能力の高さが、学業成績に影響を与える要因として、長期的な運動が、実行機能(ある目標を達成するため計画を立てて行動するための機能)を向上させ、その結果、学業成績にプラスの影響を与えたのではないかと言われている。
学力を上げるには、体力をつける運動が好ましい?
活動量と実行機能の向上を調べた研究によると、11歳の時、中強度以上の運動を行っていると実行機能が高いことがわかった。
さらに、11歳時点で中強度以上の運動における活動量が多いほど、その子どもが13歳になった時の実行機能が優れていたこと示された(Booth et al.,2013)。
有酸素能力と実行機能の関係について調べた研究によると、有酸素能力の高さは実行機能の高さと関係していることがわかった。
さらに、ある時点から3年間において有酸素能力が向上すると、実行機能も向上するということがわかっている(Scudder et al.,2016)。
有酸素能力はすなわち、体力の持続力をさし、子どもの頃から走ったり、自転車をこいだりするような心肺機能を使う運動に習慣的に取り組んでいるとそれだけ実行機能が高くなる。
結果的に、物事に計画的に取り組むことができたり、忍耐力がつくことによって学力が向上する可能性がある。
学力を高める運動の種類
実行機能を高める最適な方法は、ただ走り込めばいいというわけでない。
テニスを習っている6〜12歳の子どもを対象に、競技年数、身体活動量、体力と実行機能の関係を評価した研究がある。
この研究では、子ども間で体力レベルが同じ場合、競技年数が長いほど実行機能が優れていることが示されている(Ishihara et al,2017b)。
また、別の研究では子どもたちに通常の体育の授業を実施した場合より、チームゲームを実施した方が実行機能が向上したとされている。
ここから、体力を向上させることと合わせて、活動の中で実行機能を使う必要のある競技を習慣的にしていることが学力の向上には重要であることが窺える。
習慣的な運動は、体力を向上させ実行機能を改善させるということが、多くの研究から支持されている。
体を動かす習慣を子どもの頃に作れるよう、子どもに働きかけることが重要だといえる。
一方で、子どもが興味をもっている運動に取り組めるよう環境を整えること、子どもが運動に興味をもつ機会(スポーツ観戦など)を作っていくことも大切な視点といえるだろう。
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