テストで100点を取ったら500円。
お皿洗い1回で10円。
など、何か子どもが頑張ったら、それに対してお小遣いを渡すということは一般的に実施されている。
一方で、この方法に対して、お金でやる気を引き出すのは…
お金のために頑張る子になるのでは…
とうい不安をもつ人もいる。
実際に金銭的な報酬を与えることで、その行動に対するモチベーションが下がってしまったという研究もある。
お小遣いは無し【アンダーマイニング効果】
アンダーマイニング効果とは自発的に行なっている活動に対して報酬を与え続け、ある時点でその報酬を無くすと、報酬を与える前より活動量が少なくなる現象をさす。
特に以下の条件で、アンダーマイニング効果が生じやすくなる(Deci,Koestner,&Ryan.1999,2001)。
- 与えられる報酬がお金などの形のあるものの時
- 報酬が事前に約束されている時
- 成功したという理由でもらえる時
- 活動が完了した時にもらえる時
この様に、お小遣いのような金銭的報酬は、子どもの活動に対するモチベーションを低下させるということが研究によって示されている。
一方で金銭的報酬によって活動のモチベーションやパフォーマンスが高まるとする研究もある。
お小遣い有り
例えば、私たち大人が働くモチベーションの中に給料をもらうということは、少なからず含まれる。
また、先にも述べたように「金銭的報酬はモチベーションを高める」とする研究もある。
さらに、経済学の分野ではパフォーマンスに基づく金銭的報酬は動機づけを高めるという考え方が主流である。
お小遣い論争に終止符
実はこれまで述べてきた、お小遣いの負の側面と正の側面を検証する実験は設定された条件が異なる。
まずアンダーマイニング効果に関する実験は、金銭的報酬を子どもに与えた後、これ以上報酬がないことを伝えた上での、課題に対する取り組みを見ている。
そして、金銭的報酬の有効性を示している研究では、報酬がもらえるということを伝えた上での、課題に対する取り組みを見ている。
つまり、子どもにとってモチベーションの低い学習などの活動に対して、お小遣いを活用することで一時的にやる気を引き出すことが可能である。
一方で、一度取り入れたお小遣いを無くしてしまうと、その活動に対するモチベーションは元の水準、またはそれ以下になってしまう。
お小遣いを効果的に使う
以上のことから、お小遣いを教育に活用する上で以下のことが重要であると考える。
- すでに自発的に取り組んでいる活動に対してお小遣いを与えると、その活動に対するモチベーションを低下させる恐れがある。
- 苦手なことや、嫌なことに対するモチベーションを引き出すためのお小遣いは有り。
- お小遣いをもらうために頑張っている期間に、その活動自体に対するモチベーションをどれだけ向上させるかが重要。
先にも述べたように、私たち大人も少なからず金銭的報酬(給料)をもらうために仕事をしている。
ただ、その仕事を続けられるのは、自分の成長を感じたり、他者から感謝されたり、何かを成し遂げたりする中でやりがいを得ているからである。
だから、お小遣いを子どもにわたす時は、お金を上げること以上に、その子の頑張りや、成長を伝え、そのことを子どもが実感できることを重視する必要があると考える。
参考・引用文献:上淵寿・大芦治(2019)新・動機づけ研究の最前線,北大路書房.
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